
伊田竪坑開削関係資料は重錘寄贈記(じ
ゅうすいきぞうき)と呼ばれる 二組の巻
物で、それぞれに「乾」「坤」の巻物が箱
に収納されています。
伊田竪坑(明治43年竣工)は、明治末
期に日本三大竪坑の一つと称され、筑豊最
大級の炭鉱だった三井田川鉱業所の主力坑
でした。重錘寄贈記(昭和9年作成)は、
日本の石炭産業を代表した伊田竪坑が、当
時の最新技術を導入しながら多くの難局を克服して、竣工に至った具体的な工程を記録しています。
また、重錘寄贈記には開削担当の小林寛(ゆたか)の述懐が記されていることから、客観的な記録
のみに留まらず、技術者個人のプライベートな視点から開削の背景や人々の動きも理解できます。
このように、公私両面から記録された竪坑開削資料は極めて稀であり、伊田竪坑の具体的な開削工
程や背景が理解でき、かつ、国指定史跡・筑豊炭田遺跡群の三井田川鉱業所伊田坑跡を補完する歴史
資料です。