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文学にみる・たがわ

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五木 寛之 『青春の門』 

筑豊を知るには、まずはこれを読めとまで言われる『青春の門』。作家・五木寛之氏のライフワークとも言える第10回(昭和51年)「吉川英治文学賞」を受賞した大長編小説である。「筑豊編」「自立編」「放浪編」「堕落編」「望郷編」「再起編」と続く大河のような作品は筑豊のシンボル、香春岳の描写から始まる。

作家・五木寛之氏は昭和7年9月30日、八女市に生まれ、生後まもなく朝鮮に渡った。昭和22年、朝鮮半島から博多に引き揚げ、母の里筑後・八女に再び帰ってきた五木氏だったが、温かいはずの故郷は冷たく、戦後の混乱の中で、幼い弟と妹を抱えた15歳の少年は生きるために奔走する毎日であった。

氏が初めて香春岳を目にしたのは中学時代、お茶の行商で筑豊に足を踏み入れたときのことだった。氏はそのときの驚きと印象をこう語る。「言葉ではうまく説明できないほど強くひかれた。日本の中の異国を直感的に感じさせた。つつましい日本の風景とは違った雰囲気を持つ山の姿は僕の育った韓国の山河をふっと思い出させたのです。」(香春町・郷土史誌『かわら』)

にわかに時空を超えて甦った朝鮮の村の風景、それはまた、引揚者である氏にのみ感じうることのできた筑豊という土地の持つ磁力であったに違いない。「私は闇の中を疾走しながら、自分らの住むべき土地、デラシネの故郷を必死の思いで描いた。そしてその時、闇をすかして私の頭の奥に立ち現れたのは、筑豊の荒涼たる炭鉱地帯のイメージだったのである。土地をもたぬ、土地を追放された失うべき何物をも所有せぬ兄弟三人が生きる場所として、筑豊は私の心の底にあった。」(『にっぽん漂流』)

主人公・伊吹信介が幼少年期を過ごした田川のまち、そして繰り返し、しつようなまでに描写される香春岳、伊吹信介は五木氏自身ではないが、まぎれもなく筑豊にとっての原風景といえるだろう。

 

 

火野 葦平 『燃える河』

作家・火野葦平は明治40年1月25日、石炭仲士玉井組の長男として若松に生まれた。早稲田大学英文科に進み文学を志すが、家業を継ぐため中退。昭和4年から12年まで、玉井組の親方として、危険で荒っぽい仲仕社会に身を置いた。

「荒くれた仲仕と、一見放縦な生活の連続と、かけひきと、力と、情と、非常に錯雑した生活の中に、兄さんもひとつの高邁な精神を失わずに生きる悩みを悩んでいる。」

これは彼が仲仕の親分をしている時期に弟、玉井政雄氏に書いた手紙の一節。一見豪放磊落(ごうほうらいらく)に見え、実は繊細な火野葦平の一面が伺える。

昭和13年『糞尿譚(ふんにょうたん)』で芥川賞を受賞。その後も、『麦と兵隊』をはじめとする兵隊三部作や、『花と龍』に代表される九州が舞台の数多くの名作を残す。田川との結びつきも強く、徳勝寺(番田町)の住職横山群氏とは親しく交流。西田川高校の校歌も火野が作詞したものである。

 

 

森鴎外 『歌日記』

明治32年、森鴎外は第12師団軍医部長として小倉に着任、明治35年までに小倉に住んだ。

田川を訪れたのは明治34年のこと。衛生隊演習のため7月3日に小倉を出発し、この句を仲哀トンネル付近で詠んでいる。雨中の行軍というモノクロームの世界、その中で若葉の緑が一際鮮烈に浮かび上がるさまを詠んだものだ。この折の田川来訪は鴎外が小倉在勤時代のことを記した『小倉日記』に、「夜田川炭坑三井倶楽部山田某の家に宿す。山田の説を聞くに、三井は竪坑多く、田川は皆斜坑である。(中略)十二時毎に坑夫をして更代せしむ。一夫は採掘七八時間にして炭一噸を得べしといふ」とつづられている。

鴎外は小倉着任早々、明治32年9月16日の福岡日々新聞(現西日本新聞)に、有名な評論「我をして九州の富人たらしめば」を発表。この中で鴎外は当時の石炭成金たちが稼いだ金を酒食のみに浪費することをいましめ、芸術育成のために使うことを進言している。

 

 

与謝野晶子 『書簡』

歌人与謝野鉄幹・晶子夫妻は大正6年と7年の二度にわたり九州を旅行。

最初の年、鉄幹らは若松・福岡を経て田川に来訪、当時伊田坑の主任だった小林寛氏宅に一泊し、6月21日、氏の案内で竪坑に下っている。得がたい経験であったろう坑内の見学、これは明治44年、小林氏がヨーロッパの炭坑技術研究のため洋行の途次、たまたま同じ船に乗り合わせていた鉄幹と知遇を得たことが機縁となって実現したものだ。

後日晶子から小林夫人にあてた礼状で、当時寒村だった伊田町のたたずまいと、水の滴る坑内の様子がいかにも歌人らしい筆致でつづられている。

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